なぜ会社の近くに住むべきか?メリットとデメリットを徹底解説
住まい選びで最も重要な条件の一つが「職場からの距離」です。近年、働き方が多様化する中でも、会社の近くに住むことには数多くのメリットがあります。本記事では、会社の近くに住むことのメリット・デメリットを詳しく解説し、あなたの住まい選びをサポートします。
目次
会社近くに住む重要性
住まい選びにおいて「会社からの距離」は非常に重要な要素です。多くの人が「家賃」や「間取り」に注目しがちですが、実は会社との距離こそが、あなたの日々の生活の質を大きく左右します。
総務省の調査によれば、日本人の平均通勤時間は片道約39分。東京都に限ると約58分にもなります。年間で計算すると、東京都民は平均して約464時間(約19日間)を通勤に費やしていることになります。これは人生において非常に大きな時間です。
会社の近くに住むことは単に「通勤時間の短縮」だけでなく、あなたの健康、経済状況、キャリア発展、そして私生活の充実に至るまで、多角的なメリットをもたらします。しかし同時に、考慮すべきデメリットもあります。
通勤に関する基本データ
39分
日本人の平均片道通勤時間
58分
東京都民の平均片道通勤時間
19日
東京都民が年間で通勤に費やす時間
会社近くに住む7つのメリット
1. 通勤時間の大幅な短縮
最も明白なメリットは、通勤時間の短縮です。会社から徒歩圏内や数駅程度の距離に住めば、平均1時間以上かかる通勤時間を15〜20分程度に短縮できます。
通勤時間が短いと、朝のストレスが軽減され、余裕を持って出勤できるようになります。急いで準備する必要がなく、朝食をしっかり摂る時間も確保できるため、健康面でもプラスです。
通勤時間短縮のメリット
- 朝のゆとりある時間の確保(余裕を持った起床、朝食時間の確保)
- 満員電車によるストレスや疲労の軽減
- 通勤中の事故や遅延リスクの低減
- 急な天候変化(雨・雪など)の影響を受けにくい
2. 通勤費の大幅削減
会社の近くに住むことで、通勤費を大幅に削減できます。徒歩通勤が可能であれば、交通費はゼロになります。自転車通勤でも、メンテナンス費用程度で済みます。
例えば、月の交通費が15,000円かかっていたとすると、年間では180,000円の節約になります。この金額を貯蓄や趣味、自己投資に回すことができます。
節約できる費用の例
通勤定期代(年間): 約120,000円〜240,000円
カフェでの朝食代(年間): 約100,000円
通勤時の飲料代(年間): 約36,000円
3. 身体的・精神的健康の向上
長時間通勤による疲労やストレスは、健康に悪影響を及ぼすことが科学的に証明されています。会社の近くに住むことで、これらのリスクを大幅に軽減できます。
英国の研究では、通勤時間が20分増えるごとに、精神的健康度が低下する傾向が報告されています。また、長時間通勤者は短時間通勤者に比べて、睡眠不足になりやすいことも分かっています。
健康面でのメリット
- 睡眠時間の確保が容易になる
- 通勤によるストレスや疲労の軽減
- 余った時間で運動や趣味に取り組める
- 満員電車での感染リスク低減
4. 仕事の生産性向上とキャリア発展
会社の近くに住むことは、意外にもキャリア発展にプラスとなります。短い通勤時間により、朝は体力を温存して出社でき、夕方も疲労が少ない状態で仕事に集中できます。
また、急な残業や早朝会議にも柔軟に対応できるため、仕事の機会を逃さず、上司や同僚からの信頼も得やすくなります。さらに、必要に応じて一時帰宅も可能なため、効率的な働き方ができます。
「近くに住んでいるからこそ、緊急の案件にすぐ対応できた。それが信頼につながり、大きなプロジェクトを任されるようになった」(30代、マーケティング職)
5. プライベート時間の大幅増加
通勤時間の短縮は、そのまま自由に使える時間の増加につながります。往復2時間の通勤時間が30分になれば、毎日1時間30分の時間が生まれます。週5日勤務なら、週に7時間30分、月に30時間もの自由時間が増えることになります。
この時間を家族との団らん、趣味、自己啓発、運動など、人生を豊かにする活動に充てることができます。平日の夜に習い事や友人との食事なども計画しやすくなります。
6. 急な呼び出しにも対応可能
会社の近くに住んでいると、急な呼び出しや緊急事態にも素早く対応できます。システムトラブルや重要な来客対応など、予期せぬ事態が発生した場合でも、短時間で会社に到着できるのは大きなメリットです。
また、自宅での勤務中に急遽オフィスへの出社が必要になった場合も、スムーズに対応できます。この対応力の高さは、あなたの評価アップにもつながるでしょう。
7. 災害時の安全確保
大地震や台風などの災害時、公共交通機関はしばしば麻痺します。会社から遠く離れた場所に住んでいると、帰宅困難者となるリスクが高まります。
会社の近くに住んでいれば、徒歩で帰宅できる可能性が高く、安全を確保しやすくなります。また、災害時に会社が避難所として機能する場合もあり、近隣に住んでいることで避難がスムーズになります。
災害時の備え
東日本大震災時、東京都内では約515万人の帰宅困難者が発生しました。会社から5km以内(徒歩1時間程度)に住んでいれば、多くの場合、徒歩での帰宅が可能です。事前に会社から自宅までの徒歩ルートを確認しておくことをおすすめします。
通勤時間と費用の関係性
通勤時間と住居費には一般的に反比例の関係があります。つまり、会社に近いほど家賃は高くなる傾向があります。しかし、単純に家賃だけで判断するのは適切ではありません。通勤にかかる総コストを考慮する必要があります。
通勤時間 | 月間通勤費 | 年間通勤費 | 10年間の通勤費 |
---|---|---|---|
10分(徒歩/自転車) | 0円 | 0円 | 0円 |
30分(電車1~2駅) | 約6,000円 | 約72,000円 | 約720,000円 |
60分(電車複数路線) | 約15,000円 | 約180,000円 | 約1,800,000円 |
90分以上(長距離通勤) | 約25,000円 | 約300,000円 | 約3,000,000円 |
会社から遠くに住むことで家賃は安くなっても、通勤費や通勤中の飲食費などを考慮すると、実質的な節約効果は小さくなることがあります。さらに、通勤時間という「見えないコスト」も計算に入れるべきです。
通勤時間の金銭的価値
通勤時間を時給換算すると、その価値が見えてきます。例えば、時給2,000円のスキルを持つ人が毎日2時間通勤しているなら、年間で約100万円分の時間を通勤に費やしていることになります(2,000円×2時間×250日)。この視点から見ると、家賃が月に数万円高くても、会社近くに住む価値があるかもしれません。
ワークライフバランスの向上
会社の近くに住むことは、ワークライフバランスの向上にも大きく貢献します。通勤時間の短縮により生まれた時間は、あなたの生活の質を高める様々な活動に充てることができます。
家族との時間の確保
通勤時間が短ければ、朝は家族と余裕を持って朝食を取る時間ができ、夕方も早く帰宅できるため、子どもとの遊び時間や家族との団らんの時間を確保できます。特に小さなお子さんがいる家庭では、この時間の価値は計り知れません。
「以前は片道90分の通勤で、子どもの寝顔しか見られない日々でした。会社近くに引っ越してからは、朝も夕方も子どもと過ごせる時間ができ、家族関係が大きく改善しました」(40代、エンジニア)
趣味や自己啓発の時間確保
通勤時間の短縮で生まれた時間は、趣味や自己啓発にも活用できます。平日の夜でも習い事に通ったり、読書や勉強の時間を確保したりすることが可能になります。
これらの活動は心の充実感をもたらし、仕事のパフォーマンス向上にも繋がります。充実した私生活が、仕事へのモチベーションを高める好循環を生み出すのです。
緊急時の対応力
会社の近くに住むことの重要性は、緊急時により鮮明になります。予期せぬ事態が発生した際の対応力は、会社との距離に大きく左右されます。
災害時の安全確保
大規模災害時、公共交通機関は長時間にわたって停止することがあります。2011年の東日本大震災では、首都圏の多くの通勤者が帰宅困難者となりました。
会社から徒歩圏内に住んでいれば、こうした事態でも自力で帰宅できる可能性が高まります。また、家族の安否確認もより迅速に行えるでしょう。
急な体調不良への対応
仕事中に体調を崩した場合、会社から近ければすぐに帰宅して休むことができます。遠距離通勤の場合、体調不良でも長時間の通勤を強いられるか、会社で無理して過ごすことになりがちです。
特に持病がある方や、体力に自信がない方にとって、この点は重要な考慮事項になります。
会社近くに住む4つのデメリット
会社近くに住むことには多くのメリットがありますが、忘れてはならないデメリットも存在します。住まい選びの際は、これらのデメリットも考慮に入れる必要があります。
1. 家賃・物価の高騰
オフィス街や商業地の近くは、一般的に家賃や物価が高い傾向にあります。特に都心部のオフィス街近辺では、同じ広さの部屋でも郊外に比べて1.5〜2倍の家賃がかかることも珍しくありません。
家賃・物価の高騰による影響
- 同じ予算では部屋の広さや設備が制限される
- 飲食店や小売店の価格が高めに設定されていることが多い
- 将来的な家賃値上げリスクも考慮する必要がある
2. プライバシーの懸念
会社の近くに住むと、休日や勤務時間外に同僚や上司と遭遇する可能性が高まります。近所のスーパーやカフェで気軽に過ごせない、私服姿を見られたくないなど、プライバシーに関する懸念が生じることがあります。
特にプライベートと仕事の境界をはっきりさせたい方にとっては、このデメリットは無視できない要素かもしれません。
3. 転職時の引っ越しリスク
会社の近くに住むことを重視して住居を決めた場合、転職や異動があった際に再び引っ越しが必要になるリスクがあります。引っ越しには費用だけでなく、精神的・肉体的な負担も伴います。
キャリアプランが未定の若手社会人や、転職を検討している方は、このリスクを考慮する必要があるでしょう。
転職リスクへの対策
複数の主要駅から通いやすい場所を選ぶことで、転職時のリスクを軽減できます。また、定期的な転勤がある会社の場合は、会社近くよりも交通の便が良い場所に住むことも一つの戦略です。
4. 生活環境の制約
オフィス街の周辺は、夜間や週末に飲食店や商業施設が閉まっていることが多く、生活の利便性が低下することがあります。また、公園や緑地が少なく、子育て環境や自然環境を重視する方にとっては物足りなさを感じる可能性があります。
さらに、騒音や人通りの多さなど、オフィス街特有の環境要因も考慮すべきでしょう。
理想的な「近さ」とは?
会社の「近く」と一言で言っても、その理想的な距離感は人によって異なります。家族構成、ライフスタイル、価値観などに応じて、自分にとっての最適な距離を考える必要があります。
通勤時間で考える理想的な距離
多くの研究では、片道の通勤時間が30分以内であれば、身体的・精神的な健康への悪影響は最小限に抑えられるとされています。また、15分以内であれば、さらに良好な効果が得られるようです。
ただし、あまりに近すぎると前述のデメリットも強く現れるため、多くの専門家は「徒歩10〜15分、または電車で15〜30分程度」を理想的な距離としています。
理想的な通勤時間の目安
- 最適: 徒歩10〜15分(約1km程度)
- 良好: 自転車で10〜20分(約3〜5km程度)
- 許容範囲: 電車で15〜30分(乗り換え1回以内)
ライフステージ別の考え方
理想的な距離は、あなたのライフステージによっても変わります。例えば:
ライフステージ | 理想的な距離の考え方 |
---|---|
独身・若手社会人 | 会社により近い場所が有利(キャリア構築期には柔軟な働き方が重要) |
共働き夫婦 | 両者の勤務先へのアクセスがバランス良い場所 |
子育て世帯 | 通勤時間は若干長くても、教育環境や子育て環境を優先 |
シニア世代 | 通勤の負担が少なく、医療機関などの生活インフラも充実した場所 |
エリア選びのポイント
会社近くに住む際、単に距離だけでなく、エリアの特性も重要な選択基準となります。以下のポイントを考慮して、最適なエリアを選びましょう。
生活インフラの充実度
オフィス街の近くであっても、生活に必要なインフラが充実しているかを確認することが重要です。特に以下の点をチェックしましょう:
- スーパーやコンビニの営業時間と品揃え
- 医療機関(内科・歯科など基本的な診療科)の有無
- 銀行やATMの利便性
- 飲食店の種類と営業時間(特に夜間や週末)
住環境のバランス
オフィス街と住宅地のバランスが取れたエリアを選ぶことで、会社の近さと生活の快適さを両立できます。純粋なオフィス街よりも、「職住混在エリア」の方が生活利便性は高い傾向にあります。
また、今後の再開発計画がある地域は、将来的に住環境が向上する可能性があるため、不動産会社やエリア情報サイトで確認しておくとよいでしょう。
おすすめのエリア選びの方法
会社を中心に、徒歩15分圏内、自転車20分圏内、電車20分圏内の3つの円を地図上に描いてみましょう。その中から、生活インフラが充実し、家賃のバランスが良いエリアを絞り込むと効率的です。また、実際に平日・休日の異なる時間帯に訪れて、エリアの雰囲気を確認することも大切です。
まとめ:あなたに最適な選択は?
会社の近くに住むことには、通勤時間の短縮、コスト削減、健康増進、ワークライフバランスの向上など、多くのメリットがあります。一方で、家賃の高さやプライバシーの懸念などのデメリットも存在します。
最適な住まい選びは、あなたの価値観やライフスタイル、キャリアプランに応じて異なります。以下のチェックリストを参考に、あなたにとっての最適解を見つけてください。
会社近くに住むべきかの判断チェックリスト
- 時間を重視するか? 時間を最も貴重な資源と考える人には、会社近くがおすすめ
- キャリア重視か? 今の会社でのキャリア構築を重視する人には、会社近くが有利
- 家族との時間を重視するか? 家族との時間を大切にしたい人は、通勤時間の短縮が効果的
- 健康状態は? 持病がある、または体力に自信がない人は、短い通勤距離が望ましい
- 住環境へのこだわりは? 住環境を重視する場合は、多少通勤時間が長くなっても許容できるかを検討
- 転職の予定は? 近い将来の転職を考えている場合は、特定の会社に最適化しすぎない立地を
最終的には、通勤時間、家賃、生活環境のバランスを考慮し、自分のライフスタイルに合った選択をすることが大切です。会社の近くであることのメリットは大きいですが、あなた自身の優先順位に合わせた住まい選びが、長期的な満足につながります。