知らなかったでは済まされない メルカリの出品で著作権侵害 ユニオン・デ・ファブリカンからの削除要請とアカウント停止
目次
はじめに:デジタル経済における知的財産権の重要性
デジタル経済の急速な発展に伴い、フリマアプリにおける知的財産権保護は重要な課題となっています。特にメルカリのような大規模プラットフォームでは、膨大な出品の中から著作権侵害行為を効率的に検出し、権利者保護を実現する必要があります。
近年の研究では、オンラインプラットフォームにおける知的財産権侵害対応の重要性が指摘されており、プラットフォーム事業者の責任範囲と効率的な権利保護メカニズムの確立が求められています。2024年に施行された情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法)の改正は、この流れを加速させる重要な転換点となりました。そのためメルカリなどのフリマアプリではより一層、知的財産権侵害への厳しい対応がされるようになりました。
ユニオン・デ・ファブリカンとは何か
組織の概要
一般社団法人ユニオン・デ・ファブリカンは、海外著名ブランドを会員とする権利者団体です。フランスの公益社団法人を母体とし、世界各国の有名ファッションブランドやスポーツブランドが会員となっています。
法的地位
同団体は情報流通プラットフォーム対処法ガイドラインに基づく「信頼性確認団体」として認証されており、会員権利者からの知的財産権侵害削除依頼をプラットフォーム運営者に伝達する権限を有しています。
活動内容
偽造品の排除と商標権侵害行為の防止を目指し、関係省庁・取締機関に情報提供を行うとともに、電子商取引プラットフォームでの権利侵害対応を実施しています。
信頼性確認団体制度の意義
従来、プラットフォーム事業者は削除要請の都度、申出者の本人性確認を行う必要がありました。しかし、信頼性確認団体制度により、一定の基準を満たす団体が事前に確認を行うことで、削除対応の迅速化が実現されています。この制度は、権利者保護とプラットフォーム運営の効率化を両立する重要なメカニズムです。
メルカリの著作権対策システム
メルカリは2014年から権利者保護プログラムを運用し、500社以上の権利者との連携を構築してきました。このプログラムは、24時間365日の監視体制と組み合わせることで、効率的な権利保護を実現しています。
権利侵害対応の進化
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2014年権利者保護プログラム開始、メールベースでの削除申立受付
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2021年専用Webサイト開設、申立手続きの簡略化を実現
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2024年情報流通プラットフォーム対処法対応、監視体制の強化
同プログラムの対象権利は商標権・意匠権・特許権・著作権・肖像権・パブリシティ権・育成者権と多岐にわたり、包括的な知的財産権保護を実現しています。プログラム加入者は初回のみの本人確認書類提出で、その後の削除申立を専用フォームから簡単に行うことが可能です。
著作権侵害の具体的事例と判断基準
明確な侵害行為
- 権利商品のロゴ・デザイン・マークの無断使用
- ブランド品の加工によるリメイク品の販売
- キャラクターを模倣したハンドメイド品の出品
- ロゴワッペンなど部分的な権利物の販売
グレーゾーンの事例
- 「○○風」「○○系」「○○タイプ」の表記
- 商品説明への無関係ブランド名記載
- 酷似デザインによる混同惹起
- 正規品確証のない中古ブランド品
特に注意すべきは、意図的でない侵害行為も対象となることです。例えば、ハンドメイド作品において著名キャラクターに類似したデザインを使用した場合、作者が意図しなくても著作権侵害に該当する可能性があります。
判断の複雑性
近年の事例では、有料データベースからの判決文複写販売が知的財産権侵害として削除された例もあります。これは、従来の商標・著作権侵害を超えて、情報サービスの利用規約違反も含む広範な権利保護が行われていることを示しています。
削除要請のメカニズム
ユニオン・デ・ファブリカンからの削除要請は、専門的な権利侵害判定に基づいて実施されます。同団体は「刑事事件等でも鑑定を行っている人員」により商標権侵害物品の判断を行っており、高い専門性を有しています。
削除要請の流れ
1. 権利侵害疑義商品の発見
2. 専門家による侵害判定
3. プラットフォーム運営者への削除依頼
4. 運営者による審査・削除実行
法的根拠
情報流通プラットフォーム対処法第3条に基づく削除要請権限と、信頼性確認団体としての地位により、迅速な権利保護が可能となっています。
対応の特徴
膨大な削除依頼数のため、電話対応は行わず、専用フォームからの問い合わせのみを受け付けています。これは効率的な運用のための措置です。
重要なのは、アカウント利用停止措置の決定権はプラットフォーム運営者にあることです。ユニオン・デ・ファブリカンは削除依頼を伝達するのみで、利用停止の判断は各プラットフォームの利用規約に基づいて行われます。
アカウント停止に至るプロセス
メルカリにおけるアカウント停止は、累積的な規約違反や重大な権利侵害によって決定されます。単一の削除要請では通常商品削除に留まりますが、複数回(噂では3回)の違反や悪質な事例では永久停止に至る場合があります。なお、過去に数回同じことをしていた場合にまとめて削除申請が複数かいされた場合に即アカウント停止になるようです。
以下が実際の文章です。こうなった場合に問い合わせてもすぐには解除されずに3カ月の停止処分となり、3か月後に使える場合もあれば3カ月以降も使えない永久停止となる場合もあるそうです。こうならないためにも著作権はちゃんと把握しなればいけません。
段階的な措置
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第1段階商品削除 – 個別の権利侵害商品の削除
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第2段階警告・注意 – 規約遵守の警告通知
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第3段階一時利用停止 – 数日から数週間の利用制限
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最終段階永久停止 – アカウントの完全停止
興味深いことに、正規品を出品していた場合でも削除対象となるケースが報告されています。これは、商品の真贋判定における対応策として、疑義のある商品については削除が行われる場合があることを示しています。
出品者が講じるべき対応策
商品選定時の注意点
- 正規購入ルートの確保と記録保持
- シリアルナンバー等の真贋証明資料の撮影
- ブランド公式サイトでの真贋確認
- 自分の所有物ではなかった貰い物など、よくわからない疑義のある商品の出品回避
説明文作成の留意事項
- 無関係ブランド名の記載禁止
- 「○○風」「○○系」表現の回避
- 正確な商品説明による誤解防止
- 購入経路の明記
特にハンドメイド作品の出品においては、オリジナルデザインの使用を心がけ、既存キャラクターや著名デザインの模倣は避けることが重要です。また、同人誌等の二次創作物についても、著作権法上の問題を十分に理解した上で出品する必要があります。 特に遺品など、家にあったよくわからないブランド品を複数出品していたらそれが実はコピー品で著作権侵害にあたり、まとめて削除要請されてしまい即アカウント永久停止処分になる事例があったそうです。
リメイク品の注意点
ブランド品のリメイク・加工は、元のブランド価値を毀損し、商標権侵害に該当する可能性が高いため、出品は控えることを強く推奨します。正規品であっても、改変により権利侵害となるリスクがあります。
情報流通プラットフォーム対処法との関連性
2024年5月に公布された情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法)は、大規模プラットフォーム事業者に対してより厳格な権利保護義務を課しています。この法改正により、削除申出への迅速対応と削除基準の策定・公表が義務化されました。
新制度の特徴
大規模特定電気通信役務提供者に対する規制強化により、一定期間内の削除対応と透明性の向上が求められています。
信頼性確認団体の役割拡大
ユニオン・デ・ファブリカンのような信頼性確認団体の重要性がさらに高まり、効率的な権利保護のキーとなっています。
出品者への影響
より迅速な削除対応により、権利侵害のリスク認識と事前の予防措置の重要性が増大しています。
この法的枠組みの変化は、プラットフォーム事業者だけでなく、一般利用者にも大きな影響を与えます。個人出品者であっても、知的財産権に関する基本的理解が不可欠となり、法令遵守意識の向上が求められています。
今後の展望と課題
デジタルプラットフォームにおける知的財産権保護は、AI技術の活用により更なる進化を遂げると予想されます。機械学習による自動判定システムの導入により、より効率的で精度の高い権利侵害検出が可能となるでしょう。
技術的進歩
画像認識技術と自然言語処理の組み合わせにより、商品画像と説明文の総合的な権利侵害判定が実現されると期待されます。
国際的協調
越境ECの拡大に伴い、国際的な権利保護協力の枠組み構築が急務となっています。
教育・啓発
利用者教育の重要性が高まり、知的財産権に関する基礎知識の普及が課題となっています。
一方で、過度な規制による健全な商取引への悪影響も懸念されます。正規品の流通確保と権利保護のバランスを如何に保つかが、今後の重要な課題となるでしょう。
出品者への提言
変化する法的環境に適応するため、出品者は著作権の考慮をすることが重要です。疑義のある商品の出品は避け、透明性の高い取引を心がけることで、長期的な信頼関係を構築できるでしょう。
メルカリをはじめとするフリマプラットフォームは、今後も権利者保護と利用者利便性の両立を図りながら、健全なマーケットプレイスの構築を目指していくことになるでしょう。出品者もまた、このエコシステムの一員として、責任ある行動を取ることが求められています。