愛犬の歯磨きを始めたい飼い主のために、獣医師監修でわかりやすく解説した歯磨きの始め方と継続のコツを紹介するアイキャッチ画像

最終更新日: 2025年4月15日

愛犬の歯磨きガイド:始め方から継続テクニックまで獣医師監修で徹底解説

犬の歯磨きは「面倒だから後回し」になってはいませんか?実は、適切な歯のケアは愛犬の健康と長寿に直結する重要な習慣です。歯周病は単なる口臭の問題ではなく、心臓や腎臓などの全身疾患にも影響を及ぼす可能性があります。この記事では、獣医師の監修のもと、なぜ犬の歯磨きが必要なのか、効果的な歯磨きの方法、おすすめのグッズの選び方、そして愛犬に歯磨きを習慣づけるコツまで、科学的根拠に基づいて詳しく解説します。

1. 犬の歯磨きが重要な理由と歯周病のリスク

人間と同様、犬も歯垢や歯石が蓄積することで歯周病のリスクが高まります。しかし、犬の場合は人間よりも歯周病の進行が早いという特徴があります。これは犬の口内環境が人間とは異なり、唾液のpH値が高く、歯垢が石灰化して歯石になりやすいためです。

歯周病がもたらす全身への影響

歯周病は単に口臭や歯の問題だけではありません。口内の細菌が血流に乗って全身に運ばれることで、以下のような深刻な健康問題につながる可能性があります:

  • 心臓弁膜症や心内膜炎などの心臓疾患のリスク増加
  • 腎臓や肝臓への負担と機能低下
  • 糖尿病のコントロールを難しくする
  • 関節炎症状の悪化
  • 全身の慢性炎症による免疫系への負担

獣医師からのアドバイス

「犬の歯周病は3歳以上の80%以上に見られると言われています。小型犬ほど歯周病のリスクが高く、特に歯の密集した犬種では注意が必要です。適切な歯のケアで寿命が1〜3年延びるというデータもあります。人間の1日は犬の約7日に相当するため、毎日の積み重ねが重要です。」(鈴木健太 獣医師)

歯周病の進行段階と症状

進行段階 症状 口臭 対処法
初期(歯肉炎) 歯肉の赤み、腫れ、わずかな出血 軽度 定期的な歯磨きで回復可能
中期(軽度歯周病) 歯石の増加、歯肉の後退、明らかな炎症 中度〜強い 獣医師による専門的クリーニングと日常的なケア
重度(中等度歯周病) 歯周ポケットの形成、骨吸収の開始 強い 獣医師による深部クリーニングと集中的な管理
末期(重度歯周病) 歯の動揺、膿瘍形成、骨の広範な破壊 非常に強い 抜歯を含む外科的処置が必要なことが多い

歯周病のサイン:見逃していませんか?

以下のような症状がある場合は、すでに歯周病が進行している可能性があります。早めに獣医師に相談しましょう。

  • 口臭が強くなった
  • よだれが増えた、血が混じっている
  • 食欲の低下や食べ方の変化(片側でしか噛まない等)
  • 口を触られるのを嫌がるようになった
  • 歯ぐきが赤く腫れている、出血している
  • 歯が茶色や黄色に変色している

2. 犬種別・年齢別の歯の特徴と注意点

すべての犬に同じアプローチが適切というわけではありません。犬種や年齢によって、歯の状態や口腔内の構造は大きく異なり、それぞれに合ったケア方法が必要になります。

犬種による歯の特徴と注意点

犬種タイプ 特徴 主な問題 ケアのポイント
小型犬
(チワワ、ヨークシャーテリア等)
歯が密集しやすく、顎が小さい 歯石形成が早い、歯並びの問題、乳歯遺残 小さめのブラシを使用し、特に奥歯の内側まで丁寧に
短頭種
(パグ、ブルドッグ等)
顎が短く、歯が重なりやすい 不正咬合、歯周病のリスクが高い 指ブラシや極細ブラシを活用し、歯の重なり部分に注意
中・大型犬
(ラブラドール、シェパード等)
歯が大きく、強い 歯の摩耗、破折のリスク 耐久性のある歯ブラシと適切な噛むおもちゃの提供
長頭種
(コリー、グレイハウンド等)
顎が細長く、歯の露出が多い エナメル質の摩耗、知覚過敏 優しいブラッシングと敏感な歯に配慮した歯磨き粉の使用

年齢別の歯のケアと注意点

犬の年齢によっても、口腔内の状態やケア方法は変わります。以下は年齢別のポイントです:

  • 子犬期(〜1歳):乳歯から永久歯への交換期。この時期から歯磨きに慣れさせることが重要。乳歯が残っていないか確認し、噛み癖のコントロールも大切。
  • 成犬期(1〜7歳):最も活発で健康的な時期だが、歯石形成が始まりやすい。定期的な歯磨きの習慣化と年1回の専門的クリーニングがおすすめ。
  • シニア期(7歳〜):歯の摩耗や歯周病が進行しやすい時期。歯の緩みや欠損に注意し、より柔らかいブラシと適切な栄養管理が必要。

小型犬は特に注意が必要

小型犬は大型犬に比べて歯周病のリスクが約5倍高いと言われています。これは顎が小さいために歯が密集していることと、相対的に歯が大きいことが原因です。特にヨークシャーテリア、チワワ、マルチーズ、トイプードル、ポメラニアンなどの小型犬種では、子犬の頃から積極的な歯のケアを始めることが非常に重要です。

3. 歯磨きの効果的な方法と手順

正しい歯磨きの方法を知ることで、短時間でも効果的にケアすることができます。以下は獣医師が推奨する基本的なステップです。

1

準備

落ち着いた環境で愛犬をリラックスさせます。膝の上に乗せるか、横に座らせて、片手で優しく顎を支えます。初めての場合は短時間(30秒程度)から始め、徐々に時間を延ばしていきましょう。

2

唇を優しく持ち上げる

親指と人差し指で優しく唇を持ち上げ、歯と歯ぐきを露出させます。このとき、犬の反応を見ながら慎重に行います。唇を持ち上げることに慣れていない場合は、最初はここまでで終わり、何度か練習することも大切です。

3

歯磨きの順序

上顎の外側から始め、次に下顎の外側、そして可能であれば内側も磨きます。特に歯と歯ぐきの境目(歯頸部)を意識して磨くことが重要です。初めは前歯だけでもOK。慣れてきたら奥歯まで範囲を広げていきましょう。

4

ブラッシングの方法

歯ブラシを45度の角度で歯と歯ぐきの境目に当て、小さな円を描くように動かします。力を入れすぎず、優しく磨くことがポイントです。上下の動きよりも、円を描くような動きの方が効果的に歯垢を除去できます。

5

仕上げと褒める

歯磨きが終わったら、必ず褒めたり撫でたりして、ポジティブな経験として記憶させましょう。おやつを与えるのも効果的ですが、歯磨き直後は歯磨き粉の残留を考慮し、少量にするか、歯に優しいデンタルケア用おやつを選びましょう。

獣医師からのアドバイス

「歯磨きの頻度は理想的には毎日、難しい場合でも最低週3回は行うことをお勧めします。研究によると、歯垢が歯石化するのは約72時間(3日間)と言われているため、3日に1回の歯磨きでも歯石の蓄積をある程度防ぐことができます。ただし、歯周病予防の観点からは、毎日のケアが最も効果的です。」(鈴木健太 獣医師)

歯磨き中に注意すべきサイン

以下のような反応が見られた場合は、歯磨きを中断し、獣医師に相談しましょう:

  • 激しく嫌がる、特定の部位を触ると痛がる
  • 歯ぐきからの出血がある(軽度の出血は初期には正常な場合もあります)
  • 歯がグラグラしている
  • 口内に異常な腫れや変色が見られる

4. 歯ブラシの種類と選び方

犬用の歯ブラシには様々な種類があり、愛犬の大きさや性格、口の形状に合わせて選ぶことが重要です。以下に主な種類とそれぞれの特徴を紹介します。

指サック型
★★★☆☆ 初心者向け

指にはめて使用するシリコン製のブラシ。初めて歯磨きを導入する際や、歯ブラシに慣れていない犬におすすめ。

✓ 愛犬が受け入れやすい

✓ 使いやすい

✗ 細部の清掃は難しい

✗ 歯垢除去効果は限定的

犬用歯ブラシ
★★★★★ 最も効果的

犬専用に設計された歯ブラシ。犬の口の形状に合わせた角度や、両端にブラシがついた両頭タイプなど様々。

✓ 効果的な歯垢除去

✓ 奥歯まで届きやすい

✗ 慣れるまで時間がかかる

✗ 犬種によってサイズ選びが重要

360度ブラシ
★★★★☆ 効率重視

ブラシが円周状についており、一度に歯の表面、内側、噛み合わせ面を磨ける設計。時間効率が良い。

✓ 短時間で広範囲をケア

✓ 噛んでも安全な設計が多い

✗ 大きさによっては使いにくい

✗ 細部への到達は難しい

超小型ブラシ
★★★★☆ 小型犬・子犬向け

極細の毛と小さなヘッドで、小型犬や子犬の小さな口内でも使いやすい設計。密集した歯にもアクセスしやすい。

✓ 細かい部分も磨ける

✓ 小型犬に最適

✗ 大型犬には非効率

✗ 耐久性に欠けることも

歯ブラシ選びのポイント

効果的な歯ブラシを選ぶためには、以下のポイントを考慮しましょう:

  • 犬のサイズに合わせる:小型犬には小さめのヘッド、大型犬には適度な大きさと強度のあるブラシを選びます。
  • 柔らかさを確認:歯ぐきを傷つけないよう、毛先が柔らかく丸みのあるものを選びましょう。特に初めて歯磨きを導入する場合は、より柔らかいものから始めるのがおすすめです。
  • 持ちやすさを重視:長時間握っても疲れない、滑りにくいグリップのものを選ぶと続けやすいです。
  • 犬の性格に合わせる:神経質な犬には静かで刺激の少ないタイプを、活発な犬には噛んでも安全な耐久性のあるものを選びましょう。

歯ブラシの寿命と交換時期

犬用歯ブラシも定期的な交換が必要です。一般的には2〜3ヶ月ごとの交換が推奨されますが、犬が強く噛む傾向がある場合はより頻繁に交換する必要があります。毛先が開いてきたり、変色してきたりしたら交換のサインです。また、衛生面を考慮し、歯ブラシは使用後に洗浄し、風通しの良い場所で乾燥させましょう。

5. 歯磨き粉の成分と安全性

犬用の歯磨き粉は人間用とは大きく異なります。最も重要な違いは、犬用歯磨き粉は飲み込んでも安全な成分で作られていることです。人間用の歯磨き粉には犬にとって有害な成分が含まれていることがあるため、絶対に使用してはいけません。

避けるべき成分

以下の成分は犬にとって有害なため、含まれている歯磨き粉は使用を避けましょう:

  • キシリトール:人間用の歯磨き粉によく含まれる甘味料ですが、犬にとっては非常に毒性が強く、少量でも低血糖や肝不全を引き起こす可能性があります。
  • フッ化物(高濃度):適量であれば問題ありませんが、人間用の歯磨き粉に含まれる濃度は犬には高すぎることがあります。犬用の場合は安全な濃度のものを選びましょう。
  • アルコール:口内炎や消化器の問題を引き起こす可能性があります。
  • 強い発泡剤:犬は歯磨き粉を吐き出すことができないため、発泡しすぎると不快感を与えたり、泡を吸い込む危険性があります。

効果的な成分

良質な犬用歯磨き粉には、以下のような有効成分が含まれています:

成分 効果 メリット
酵素系成分
(グルコースオキシダーゼなど)
唾液中の細菌を分解し、歯垢の形成を抑制 化学薬品に頼らない自然な防御機能の強化
重炭酸ナトリウム
(ベーキングソーダ)
優しい研磨作用と口内pHのバランス調整 口臭の軽減と穏やかな洗浄効果
クロルヘキシジン
(低濃度)
抗菌作用による歯垢・歯肉炎の抑制 獣医師推奨の安全性の高い抗菌成分
ココナッツオイル 自然な抗菌作用と歯垢付着防止 刺激が少なく、敏感な犬にも適している
亜鉛化合物 口臭の原因となる硫黄化合物を中和 効果的な口臭対策

歯磨き粉なしでも効果はある

歯垢の除去という観点では、機械的な清掃(ブラッシング)が最も重要です。歯磨き粉がなくても、適切なブラッシングを行うことで歯垢の大部分は除去できます。歯磨き粉を使用する主な利点は、抗菌作用や口臭予防、犬が好む風味によって歯磨きの受け入れが良くなる点です。歯磨き粉に抵抗がある場合は、まずブラッシングだけを習慣づけることから始めましょう。

6. 初めての歯磨き:慣らし方と成功のコツ

多くの犬は最初から歯磨きを受け入れるわけではありません。特に成犬からの開始では、時間をかけて慣らしていくことが重要です。以下の段階的なアプローチで、愛犬と一緒に歯磨き習慣を構築しましょう。

1

口周りに触れることに慣れさせる

まずは日常的なスキンシップの延長として、犬の口の周りや唇、顎などを優しく触る習慣をつけます。触った後は必ず褒めたり、おやつを与えたりして、ポジティブな経験と結びつけましょう。この段階は焦らず、数日から1週間かけて行います。

2

歯と歯ぐきに触れる

次に、指で犬の唇を優しく持ち上げ、歯や歯ぐきに触れるようにします。最初は前歯だけでも構いません。この段階でも、短時間で終わらせ、必ず褒めましょう。犬が嫌がらなければ、少しずつ触れる範囲や時間を延ばしていきます。

3

歯ブラシや歯磨き粉の導入

犬が口を触られることに慣れてきたら、歯ブラシを見せて匂いを嗅がせたり、なめさせたりします。犬用歯磨き粉は肉や魚の風味がついたものが多く、これ自体を好きになってくれる犬も多いです。歯磨き粉を指につけて少量なめさせ、反応を見ましょう。

4

少しずつブラッシングを始める

歯ブラシに少量の歯磨き粉をつけ、最初は1〜2本の歯だけを軽く磨いてみます。犬が受け入れれば、少しずつ範囲を広げていきます。最初は10秒程度から始め、徐々に時間を延ばしていきましょう。一度に完璧を目指さず、毎日少しずつ進歩させることがポイントです。

5

習慣として定着させる

毎日同じ時間帯(例:夕食後や就寝前)に歯磨きをすることで、犬も予測できるルーティンとして受け入れやすくなります。歯磨き後は特別なおやつや遊びの時間を設けると、歯磨き=楽しいことという認識を強化できます。

困った時の対処法

歯磨きの導入で困難に直面した場合の対処法をご紹介します:

  • 極度の嫌がり:無理に進めず、一旦基本的なステップに戻りましょう。指サックタイプのブラシや、ガーゼを指に巻いた簡易的な方法から再スタートするのも一つの方法です。
  • 噛む傾向:歯磨き専用のおもちゃやチュータブル(噛めるタイプ)の歯ブラシを試してみましょう。犬が自分で噛むことで歯の清掃効果が得られるものもあります。
  • 恐怖心が強い:過去のトラウマなどで口周りを触られることに恐怖を示す場合は、脱感作(徐々に慣らす)トレーニングに時間をかけ、その間は代替的な口腔ケア方法を併用しましょう。
  • 集中力が続かない:活発な犬の場合、歯磨き前に十分な運動をさせて落ち着かせることが効果的です。また、短時間で終わらせることを意識し、複数回に分けて行うのも良い方法です。
「最初はブラシを見せただけで逃げていた我が家の柴犬ですが、3週間かけて少しずつ慣らしたところ、今では歯磨き粉の香りを嗅ぐと自分から寄ってくるようになりました。諦めずに褒めながら続けることが何より大切だと実感しています。」(埼玉県・犬の飼い主 山田さん)

7. 歯磨き以外の口腔ケア方法と併用効果

歯ブラシによる機械的な清掃が最も効果的な方法ですが、それを補完するさまざまな口腔ケア方法もあります。これらを組み合わせることで、より総合的な口腔ケアが可能になります。

デンタルケアグッズとその効果

ケア用品 効果 使用方法 ブラッシングとの併用価値
デンタルチュー 噛むことによる機械的な歯垢除去と唾液分泌促進 1日1回、10〜15分程度のチュータイム ★★★★☆
デンタルフード・おやつ 特殊な形状や成分による歯垢除去と口臭予防 通常の食事として、または適量のおやつとして ★★★☆☆
オーラルジェル 抗菌作用と歯垢付着防止 指で歯ぐきに塗布、または水に薄めて使用 ★★★★☆
デンタルウォーター 飲み水に添加して口腔内の細菌を抑制 指示に従って飲み水に希釈して毎日提供 ★★★☆☆
デンタルワイプ 拭くだけで簡易的な歯垢除去と口臭ケア 専用シートで歯と歯ぐきを拭く ★★☆☆☆

獣医師からのアドバイス

「補助的なデンタルケア製品は便利ですが、ブラッシングの代わりにはなりません。特にデンタルフードやおやつは『これだけで十分』という誤解を招きやすいですが、実際の効果は限定的です。最もおすすめなのは、日々のブラッシングを基本とし、それを補完するために他のケア方法を取り入れるアプローチです。例えば、毎日ブラッシングをして、週に数回デンタルチューを与え、デンタルフードを主食とするなど、複合的なケアが理想的です。」(鈴木健太 獣医師)

自然な歯のケア方法

以下のような日常的な習慣も、犬の歯の健康に役立ちます:

  • 噛むおもちゃの提供:適切な硬さの噛むおもちゃ(ロープや特殊なゴム製品など)は、自然な歯垢除去と歯ぐきマッサージの効果があります。
  • 生骨や鹿の角:天然の未加工骨や鹿の角(スプリットエルク)は、長時間噛むことで歯の清掃効果があります。ただし、骨片による消化器系のトラブルリスクもあるため、常に監視下で与え、適切なサイズを選ぶことが重要です。
  • 野菜スティック:ニンジンやセロリなどの生の硬い野菜を適切なサイズに切って与えると、噛む動作で軽い歯垢除去効果が期待できます。
  • 定期的な生肉の一口:生の筋肉肉(鶏胸肉など)を少量与えることで、噛む動作が促進され、唾液の分泌が増加します。ただし、食中毒リスクがあるため、新鮮で安全な肉を選び、少量にとどめましょう。

おやつ選びの注意点

市販のデンタルケア用おやつの中には、実際の効果が限定的なものも多いです。効果的なデンタルおやつを選ぶポイントは以下の通りです:

  • 表面にザラザラとした凹凸があり、歯垢を物理的に除去できるもの
  • 適度な硬さで、長く噛むことを促すもの
  • 獣医師会などの公認マークがついたもの
  • 添加物や糖分が少なく、カロリーに配慮されたもの

また、おやつは体重の10%以内に抑えることを意識し、肥満につながらないよう注意しましょう。

8. 専門的なクリーニングとホームケアの関係

家庭での日常的なケアがどれだけ丁寧でも、年に1〜2回の獣医師による専門的な歯科検診とクリーニングは必要です。特に歯石が形成された後は、家庭でのケアだけでは完全に除去することができません。

獣医歯科処置の流れ

獣医師による専門的なデンタルクリーニングは、一般的に以下のような流れで行われます:

  1. 事前検査:全身状態のチェックと血液検査で麻酔のリスク評価を行います。
  2. 全身麻酔:安全で徹底的なクリーニングのため、通常は全身麻酔下で処置を行います。
  3. 口腔内検査:歯周ポケットの深さ測定、レントゲン撮影などで詳細な状態を確認します。
  4. スケーリング:専用の超音波スケーラーで歯石を除去します。
  5. 歯周ポケット洗浄:歯と歯ぐきの間のポケットを洗浄します。
  6. ポリッシング:歯の表面を研磨し、微細な傷を滑らかにします。
  7. 必要に応じた処置:抜歯や歯周病治療など、追加の処置が必要な場合はこの段階で行います。
  8. フッ素塗布:歯の強化と知覚過敏の予防のためにフッ素を塗布することもあります。

専門的クリーニングが必要なサイン

以下のような症状がある場合は、獣医師による専門的なクリーニングを検討しましょう:

  • 明らかな歯石の蓄積(黄色や茶色の固い沈着物)
  • 持続的な口臭
  • 赤く腫れた歯ぐき、または出血
  • 食欲低下や食べ方の変化
  • よだれが増える、または血が混じる
  • 口を触られるのを極端に嫌がる
  • 歯が揺れている、または欠けている

ホームケアと専門ケアの関係

日常的な歯磨きは歯垢の蓄積を防ぎますが、すでに形成された歯石は専門的な器具でないと除去できません。逆に、専門的クリーニングだけで家庭でのケアを怠ると、すぐに歯垢が再び蓄積し始めます。両方を適切に組み合わせることで、最も効果的な予防が可能になります。特に小型犬や歯周病リスクの高い犬種では、若いうちから予防的なケアを始めることが重要です。

獣医師からのアドバイス

「年齢とともに麻酔のリスクは高まるため、若いうちから定期的な検診とクリーニングを受けることをお勧めします。また、専門的クリーニング後の1〜2週間は特に丁寧なホームケアを行うことで、クリーニング効果を長く維持できます。歯周病は一度進行すると完全に元に戻すことは難しいため、予防が最も重要です。」(鈴木健太 獣医師)

9. 歯磨きに関するよくある質問と回答

Q1: 子犬はいつから歯磨きを始めるべきですか?

子犬の頃(2〜3ヶ月齢)から歯磨きに慣れさせることが理想的です。この時期は新しい経験に対して柔軟で、歯磨きを生活の一部として受け入れやすくなります。最初は遊びの延長として、口周りを触るところから始め、徐々に歯磨きの動作へと移行していきましょう。ただし、乳歯から永久歯への交換期(3〜7ヶ月齢)は歯ぐきが敏感になっているため、特に優しく行う必要があります。

Q2: 成犬から歯磨きを始めても効果はありますか?

はい、成犬や高齢犬からでも歯磨きを始める価値は十分にあります。すでに歯石がある場合は、まず獣医師による専門的クリーニングを受けてから、家庭でのケアを始めるのが効果的です。慣れるまでに時間がかかる場合もありますが、根気よく続けることで徐々に受け入れるようになることが多いです。歯周病の進行を遅らせたり、悪化を防いだりする効果があります。

Q3: 歯磨きを嫌がる犬にはどう対応すべきですか?

強制は逆効果になるため、根気強く段階的に慣らしていくのがポイントです。最初は指に味の良い犬用歯磨き粉をつけて舐めさせるだけから始め、口に触れることへの抵抗感を減らしていきましょう。歯磨き後に特別なおやつや遊びの時間を設けるなど、ポジティブな経験と結びつけることも効果的です。それでも難しい場合は、デンタルスプレーやジェル、デンタルウォーターなど、代替的なケア方法を併用しながら、徐々に歯磨きに慣らしていくアプローチも有効です。

Q4: 歯磨きの適切な頻度はどれくらいですか?

理想的には毎日1回、最低でも週に3回の歯磨きが推奨されています。歯垢が歯石化するのは約72時間(3日間)と言われているため、3日に1回の頻度でも歯石形成をある程度防ぐことができます。特に小型犬や歯周病のリスクが高い犬種では、可能な限り毎日のケアが望ましいです。短時間でも毎日続けることが、不定期に長時間行うよりも効果的です。

Q5: 人間用の歯ブラシや歯磨き粉を使用しても大丈夫ですか?

人間用の歯ブラシは、柔らかいもの(子供用など)であれば代用可能ですが、犬用に比べると使いにくい場合があります。一方、人間用の歯磨き粉は絶対に使用しないでください。多くの人間用歯磨き粉には、犬にとって有毒なキシリトールや高濃度のフッ化物が含まれていることがあります。また、発泡剤も多く含まれており、犬は歯磨き粉を吐き出すことができないため、飲み込むと消化器系の問題を引き起こす可能性があります。必ず犬専用の歯磨き粉を使用しましょう。

まとめ:愛犬の健康を守るための歯のケア

愛犬の歯と口腔の健康は、全身の健康と直結しています。適切な歯のケアは、口臭や歯の喪失などの問題を防ぐだけでなく、心臓や腎臓などの重要な臓器を守ることにもつながります。

最も効果的なケア方法は、日常的な歯磨きと定期的な獣医師による専門的クリーニングの組み合わせです。子犬の頃から始めるのが理想的ですが、いつから始めても必ず効果はあります。

無理に進めず、愛犬のペースに合わせて少しずつ慣らしていくことが長続きのコツです。愛犬との信頼関係を大切にしながら、歯磨きを日常のルーティンとして定着させていきましょう。

この記事が、あなたと愛犬の健康で幸せな生活の一助となれば幸いです。

※この記事の情報は、獣医師への取材と各種専門文献を参考に作成していますが、個体差や状況によって適切なケア方法は異なります。愛犬の口腔ケアについて不安や疑問がある場合は、必ずかかりつけの獣医師に相談してください。